ピラティスとはどんな運動?自律神経やその他の効果を紹介
ピラティスは、ストレスや身体の不調に対応できるエクササイズで、男女問わず注目されています。
運動不足の生活習慣は心身のバランスを崩す原因となりますが、ピラティスは手軽に始められ、本格的に筋肉を鍛えられる運動です。ヨガと同じ室内運動ですが、身体の機能回復を重視している点が特徴です。
この記事では、ピラティスの特徴やヨガとの違い、自律神経を整える効果について解説します。さらに、自律神経を整える効果に加えて、期待されるその他の効果についても取り上げます。
目次
そもそもピラティスとは?
ピラティスは、20世紀初頭に活躍したフィジカルトレーナーのジョセフ・ピラティスが開発したエクササイズです。
体操や柔術といった身体を使う運動から着想を得て生み出されたメソッドを基に、病気やケガを克服するためのエクササイズとして完成しました。現在では、世界中で専門的な運動法として認知されています。
ピラティスは、体幹を強化してバランスを向上させ、深層筋を鍛えるエクササイズです。マット上や専用の器具を使った多彩なトレーニングメニューが特徴です。
骨格を整え、身体を内側から強化するトレーニングを重ねることで、ダイエットやリハビリなど幅広い用途に役立てられています。
ヨガとの違い
ヨガは数千年前の古代インドにルーツをもち、呼吸や瞑想を含む修行法の一種です。
1990年代に日本でエクササイズ法として流行して以降、ヨガは自宅でも行える運動として広まりました。しかし、本来のヨガは高度な精神状態の獲得を目指す修行法であり、柔軟性や精神的リラックスを重視し、心身の調和を目的としています。
ピラティスとは異なり、ヨガは基本的にマットだけを使います。補助的な道具としてブロックやストラップを使う場合もありますが、身一つでできる点がピラティスとは異なる部分です。
自律神経はどういうものなのか
自律神経とは、交感神経と副交感神経の2つから成り、臓器や呼吸など身体の動きとバランスを調整する神経系です。
交感神経は活動時に働く神経で、副交感神経は身体をリラックスさせ疲労を回復する役割を担います。活動時間には交感神経が優位に働き、睡眠時間には副交感神経が優位となりバランスを保っています。
しかし、ストレスや不規則な生活が原因でバランスが崩れると、不眠症や食欲不振、イライラ感などの不調が現れます。「なんとなく疲れているが原因がわからない」「病気ではないが頭痛や耳鳴りがする」といった不調も、自律神経の乱れが原因で起こる可能性があります。
自律神経が乱れる原因
自律神経の乱れは、ストレスや過度な運動、猫背などの姿勢の癖、疾患などが原因となります。「自律神経失調症」と呼ばれる症状はその代表例であり、さまざまなトラブルの要因となります。
ここからは、代表的な4つの原因について説明します。
ストレス
ストレスとは、精神的または肉体的な刺激や要因(ストレッサー)によって心身に生じる反応を指します。
強いストレスがかかると、自律神経系の不調が現れやすくなります。長時間のストレスは交感神経を過剰に活発化させ、心拍数や血圧を上昇させる原因となります。結果として、不眠症や消化不良などの問題が生じるほか、免疫やホルモンにも悪影響を及ぼします。
慢性的なストレスを感じる場合は、適度に休息を取り、リフレッシュして緊張を和らげることが重要です。
過度な運動
過剰な運動は、交感神経が活発になりすぎることで自律神経のバランスを崩す可能性があります。
交感神経が過剰に働くと、副交感神経の働きが抑制され、疲労の回復が遅れる原因となります。この状態が続くと慢性的な疲労を引き起こし、自律神経のさらなる乱れを招くおそれがあります。
激しい運動後は、身体を十分に休めることが必要です。リラックスして副交感神経を優位にすることで、自律神経のバランスを整えましょう。過度な運動は神経系に負担をかけるため、健康状態に合った運動を心掛けることが重要です。
猫背
猫背は、背中が前傾し丸まった状態の名称です。まっすぐ背筋を伸ばした状態から前にかがむと胸郭が下がり、肺が膨らみにくくなって呼吸が妨げられます。猫背によって背骨が曲がると、本来力のかからない筋肉に負担がかかるため、血流低下や身体の痛みが発生します。
十分に呼吸ができなくなると、消化器系や循環器系にマイナスの影響を与えてしまいます。呼吸によってリラックスが得にくくなり、副交感神経の活動が抑制され、交感神経が優位な状態に保たれてしまうのです。
猫背は起立や歩行中はもちろん、椅子に座っているときにも発生するため、慢性的な姿勢の癖として定着するおそれがあります。慢性的な猫背は内臓が常に圧迫された状態になり、内臓機能への悪影響から体調不良を引き起こすことがあります。
疾患
猫背のような姿勢の癖だけではなく、疾患が自律神経を乱す場合もあります。
一例として、高血圧や心臓発作といった心血管疾患や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような呼吸器疾患、糖尿病や甲状腺機能亢進症のような代謝にかかわる疾患です。
これらの疾患はいずれも神経系との関連があるため、自律神経のバランスを崩す場合があります。
疾患による自律神経の不調は、疾患の治療が基本です。投薬や入院といった専門的な治療によって体調を整えることを優先させましょう。
疾患の状態に合わせた対応によって、さまざまな自律神経の不調が改善しやすくなります。どのように治療を進めていくかについては、主治医やかかりつけ医とよく相談するようにしましょう。
ピラティスで自律神経を整えることはできるの?
ピラティスは、筋肉と骨のバランスを整えて身体の不調に向き合うためのエクササイズです。
深い部分の筋肉と体幹のバランスをとる運動によって、姿勢の悪い癖を改善し、血行不良やリンパの流れの乱れにも働きかけます。身体の中のバランスが整うと、自律神経にも良い影響が出てきます。
深い呼吸を意識しながらトレーニングを行うため、運動で活発になりやすい交感神経を抑え、副交感神経のリラックス効果が得られます。運動にはストレスが伴いますが、深く呼吸を繰り返すとストレスがうまくリリースでき、心身がリフレッシュされます。
ピラティス中は、専門のインストラクターによる指導で正しく動きをとります。慣れてくると自分自身でもいろいろな動きができるようになります。不調にうまく向き合いながら、集中的に動作に取り組めるようになるでしょう。
運動中は機能回復のために集中的に動作をとるため、心を落ち着かせる「マインドフルネス」の状態になります。ストレスを軽減し、副交感神経を優位にするため、自律神経のトラブル改善に役立ちます。
ピラティスは、短時間でも継続することで機能回復を目指せるエクササイズです。生活スタイルを整えたうえでピラティスを取り入れると、体調へのポジティブな影響が期待できるでしょう。
関連記事:月4回のピラティスで実感できる効果とより効果を高めるポイント
ピラティスで自律神経が整う理由
ピラティスで自律神経が整う理由として、身体の柔軟性アップや呼吸が整うといった変化が挙げられます。
姿勢の改善や身体の動かしやすさ、血の巡りが整うといった影響から、自律神経への良い効果も期待できるのです。
それぞれの理由について、詳しくみていきましょう。
呼吸が整うため
ピラティスは、呼吸法を重視したエクササイズです。呼吸法を組み合わせているため、酸素の供給量が安定します。副交感神経を活性化して、リラックスした状態で身体を動かすことができます。
呼吸は心理的な負担を解放しながら、身体を安心させる作用もあります。姿勢の癖を直して大きく肺に空気を取り入れられるようになると、必要量の酸素を取り込めるようになります。
副交感神経が活性化すれば、心理的なストレスだけではなくコルチゾールのようなストレスホルモンの分泌も抑制され、自律神経がバランスを整えやすくなるのです。
身体の柔軟性を高めるため
ピラティスは、ケガや病気からの回復を目指して考案された動きです。
緊張しやすい筋肉をほぐして柔軟性を獲得すると、スムーズに身体が動かせるようになり、血行を促進します。血流がアップすると酸素が身体中に運ばれるため、自律神経系にとっても良い影響が期待できます。
身体が硬い人や筋肉が緊張しやすい人は、柔軟な状態になるまでに時間がかかります。しかし、正しいポーズや呼吸法を意識してピラティスを継続することで、徐々に可動域が広がり動かしやすくなっていきます。
姿勢改善につながるため
座りっぱなしの姿勢やスマートフォンを長時間眺める姿勢は、猫背をはじめとする姿勢の歪みにつながり、内臓や筋肉・骨に負担をかけて自律神経のアンバランスを引き起こす可能性があるため、姿勢の歪みを正さなければなりません。
ピラティスは、硬くなった筋肉をほぐして柔軟性を高めるため、歪みの改善に役立ちます。猫背は肺を圧迫し呼吸を浅くしてしまいますが、ピラティスによって背筋をまっすぐに戻せば、深い呼吸ができるようになります。
姿勢が直ることで見た目がすっきりと見え、さらに臓器や筋肉、神経系にも良い変化をもたらしてくれるでしょう。
無理なく身体を動かせるため
凝り固まった部分をほぐし、血流を改善して柔軟性を獲得すると、身体の可動域が広がります。これは、筋肉が柔らかくなり伸び縮みしやすくなるためです。
また、筋肉が柔軟になるため、それをつなぐ関節も動かしやすくなります。筋肉と関節の負担が軽減されると、支障なく運動ができるようになり、ピラティスを含めたさまざまな運動を習慣化しやすくなるため、自律神経を含めた体内のバランスが整っていきます。
血の巡りが良くなるため
血行不良は冷えやむくみといった目に見えるトラブルのほかにも、神経系の不調をきたします。ピラティスはそのような症状を改善するために、姿勢の癖を見直して改善し、歪みにくく柔らかい身体をつくります。
すぐにバランスが整うものではありませんが、エクササイズを継続すると徐々に柔軟性や正しいボディバランスが身についていき、血行が改善していきます。身体が動かしやすく、汗をかきやすくなってくると、血流の改善が実感できるでしょう。
自律神経を整えるためにピラティスを行う際のポイント
自律神経を整えるためにピラティスを行うときは、次のポイントを意識してください。
- 呼吸を意識する
- 正しいやり方で行う
- 一定の期間継続する
それぞれどのような点を意識するべきなのか、詳しくみていきましょう。
ポイント①呼吸を意識する
ピラティスでは、息を吸って吐くという基本的な呼吸をしっかりと意識して実践します。呼吸法と動作を組み合わせて、神経系の働きを正常に近づけていきます。
ポイント②正しいやり方で行う
エクササイズを始めたばかりの頃は、動作や呼吸法の正しい知識をもつインストラクターの指示に従ってください。はじめから自分のやり方で行うと、ピラティスの正しい効果が実感できない可能性があります。
ポイント③一定の期間継続する
ピラティスは機能回復に焦点を当てた運動のため、すぐに効果が出ない可能性があります。一定期間継続して実施すれば、運動前との違いが実感できるでしょう。
自律神経を整える以外にピラティスで得られる効果
自律神経を整える以外にピラティスで得られる効果についても確認していきましょう。
代謝の向上
筋肉と関節の負担を減らし、血行不良を改善すると、リンパの流れもより良い状態になります。そこに運動習慣をつけると、効率的にエネルギーを消費できる代謝の良い身体ができあがります。
慢性的な痛みの改善
ピラティスはケガや病気に悩む人々のために考案されたエクササイズです。慢性的な身体の痛みを抱えている方は、歪みが発生している部位を中心にアプローチすることで、痛みの改善が期待できるかもしれません。
ただし、痛みを取り除くためには原因を正しく見極め、医療など必要な処置をとったうえでピラティスを行うことが大切です。痛みのある場所を無理に動かそうとせず、まずは痛みの原因に対応するようにしましょう。
食欲の抑制
自律神経のバランスが崩れると、本来副交感神経が優位にならなければならない時間帯に交感神経が活性化し、空腹状態になる場合があります。
そのようなアンバランスな状態をピラティスで改善すると、副交感神経がしっかりと働くようになり、精神の安定とともに食欲の抑制や食事量をコントロールしやすくなります。
ストレスの軽減
ピラティスは血行やリンパの流れを改善し、呼吸法によってリラックスした状態をつくりだして副交感神経を優位にする運動です。
息を止めたり瞬間的に力を出したりする運動ではなく、無理な負担をかけずにリラックスして行うため、ストレス軽減効果が期待できるでしょう。
ピラティスの効果が出るまではどの程度の期間がかかるのか
ピラティスの効果が出るまでの期間は、生活習慣やピラティスの頻度、体質・年齢・実践方法・ピラティスの経験など細かい条件によって異なります。
一般的には開始後1〜3ヶ月と、3〜6ヶ月で変化や違いに気づきやすくなるでしょう。
初期(開始〜1ヶ月)は、ピラティスの動きに慣れていく期間です。基本的なフォームと呼吸法を学び、2つを組み合わせて動作をとっていきます。この段階ではまだ覚える物事が多く、筋肉の使い方に慣れていないため、疲労感や緊張感が出てくる場合があります。
中期(1~3ヶ月)からは、ある程度動きに慣れているためインストラクターがいなくても実践的なピラティスができるようになります。継続するほど体幹が強化され、筋肉の柔軟性が維持できるでしょう。
今まで身体が硬く、姿勢の歪みもみられていた方は、1ヶ月以上が経過してくると歪みの改善や筋力の増加が実感しやすくなるでしょう。
中期以降(3~6ヶ月)は、継続的なピラティスの実践習慣がついており、すでに身体のバランスが整いやすくなっています。
ただし、身体を歪めたままの状態や座りっぱなし・立ちっぱなしの生活を続けているとピラティスの効果が現れにくいため、癖や生活習慣の改善とピラティスを両立させることが大切です。
しかし、3ヶ月以上継続できていれば筋力がついて身体が柔らかくなり、自分でピラティスを習慣化できるようになるので、自宅で自重トレーニングとしてピラティスを実施するといった工夫もできるようになります。
ピラティスを始めた当初より寝付きがよくなった、緊張しにくくなったといった効果がみられれば、自律神経が安定していると考えられます。
ピラティスには即効性はありませんが、効果が出るまで続けることで変化を実感しやすくなります。個人差はあるものの、生活の一部として続けていけば着実に効果を実感できるエクササイズです。
ピラティスは自分のペースで自律神経を整える運動
今回は、ピラティスの特徴やヨガとの違い、期待できるさまざまな効果について紹介しました。
ピラティスは戦争の負傷者にも行われていたエクササイズで、現在も世界中で多くの人が実践している運動です。無理に効果を出そうとするのではなく、時間をかけながらマイペースに行える点が特徴です。
機能的なエクササイズとして知られるピラティスは、ヨガのように瞑想を伴わず、呼吸と運動を組み合わせて行います。身体の歪みや自律神経のトラブルといった不調を抱える方は、継続的に実践して習慣化を目指しましょう。
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監修者

山中 隆博
SDフィットネス
パーソナルトレーナー
山中 隆博
SDフィットネス パーソナルトレーナー
<資格>
- 日本ダイエット検定1級
- プロテインマイスター
- フィットネスマネジメント検定2級、1級学科
<略歴>
大学を卒業後、インストラクターとして大手スポーツクラブへ入社し、300名以上のパーソナルトレーニングを経験。その後、専門学校の非常勤講師やキッズミュージカル劇団総監督を経て、当社に入社。現在はSDフィットネスの統括責任者を担当する傍ら、業界セミナー等にも登壇している。